AI(人工知能)ブームを背景に好調な業績を報告し続けるNVIDIA(NASDAQ: NVDA)。2025会計年度第3四半期(2024年8月~10月)の決算発表では、アナリスト予想を上回る結果を示しました。しかし、株価は時間外取引で2.5%下落。この背景には、市場期待を下回るガイダンスと粗利益率の低下予測がありました。本記事では、NVIDIAの業績詳細、株価下落の理由、将来展望について詳しく解説します。
1. 2025会計年度第3四半期の業績ハイライト
業績概要
NVIDIAは、2024年8月~10月の第3四半期において以下の成果を報告しました:
指標 | 実績 | 前年比 |
---|---|---|
売上高 | $350.8億 | +94% |
純利益 | $193.1億 | +109% |
調整後EPS(1株利益) | $0.81 | 予想の$0.75を超過 |
データセンター売上 | $307.7億 | +112% |
特にデータセンター部門の売上成長が全体の収益増加を牽引しました。データセンター売上の約50%はMicrosoftなどのクラウドプロバイダーが占めており、AI向けホッパー(Hopper)やブラックウェル(Blackwell)GPUへの需要が成長の原動力となっています。
2. 株価下落の背景
好調な業績発表にも関わらず、時間外取引で株価が2.5%下落した理由は次の2点に集約されます。
(1) ガイダンスが市場期待を下回る
NVIDIAは、2024年11月~2025年1月の第4四半期売上高を**$375億(±2%)**と予測。この数値は前年同期比で70%の増加を示すものの、市場の非公式予測「ウィスパーナンバー」($390億~400億)を下回りました。これにより、成長鈍化への懸念が広がりました。
(2) 粗利益率の低下
同四半期の粗利益率(GAAP基準)は、73%に低下すると見込まれています。これは新しいGPU「ブラックウェル」の初期生産拡大に伴う影響とされています。ただし、2025年後半には再び改善し、70%台中盤に回復すると見込まれています。
3. 業績詳細:部門別の成長率
(1) データセンター部門
- 売上高:$307.7億(前年比+112%、前四半期比+17%)
- 主な成長要因:生成系AI、推論モデル、ブラックウェルとホッパーGPUへの高い需要。
(2) ゲーミング部門
- 売上高:$32.8億(前年比+15%)
- ゲーミングGPU需要の回復と新製品の好調な販売が寄与。
(3) 自動車関連部門
- 売上高:$4.49億(前年比+72%)
- 自動運転技術や車載AIシステム需要の増加。
(4) プロフェッショナルビジュアライゼーション部門
- 売上高:$4.86億(前年比+17%)
- 特定産業向け高性能GPUの需要が安定。
4. 今後の展望
(1) ブラックウェルの需要と生産
ブラックウェルは既に1万3000ユニットが出荷され、AI市場での期待が高まっています。しかし、供給制約が存在し、少なくとも2026会計年度初期まで需要が供給を上回る状況が続く見込みです。
(2) データセンター事業の拡大
生成系AIやクラウドプロバイダー向けGPU需要は引き続き成長が期待されます。新製品ラインアップにより、さらなる収益拡大が見込まれます。
(3) 課題とリスク
- 供給制約:ホッパーおよびブラックウェルGPUの供給不足が、短期的な収益に影響。
- 競争激化:AMDやインテルを含む競合他社との競争。
- 利益率低下:短期的には粗利益率が下落傾向。
5. 投資家へのメッセージ
NVIDIAは引き続きAI市場でのリーダーシップを発揮していますが、成長鈍化や利益率低下が短期的な懸念材料となっています。ただし、長期的には以下の要素がポジティブ要因として期待されます。
- AIや生成系モデルの需要増加
- ブラックウェルおよびホッパーGPUの市場シェア拡大
- クラウドプロバイダーとの強力な関係
株価下落は一時的な調整と見る向きもありますが、NVIDIAの投資を検討する際には短期的なボラティリティと供給リスクを考慮した慎重な判断が必要です。
免責事項: 本記事は情報提供を目的とし、特定の投資を推奨するものではありません。投資判断は自己責任で行ってください。