アップルに何が起きているのか?株式市場が罰を与える理由と、揺るがぬ成長の可能性
2025年現在、S&P500が年初来で上昇基調を見せるなか、世界最大級のテック企業である**アップル(Apple / AAPL)**は意外にも苦戦を強いられています。市場からの「罰」は本当に妥当なのか、それとも過剰反応なのか?この記事では、アップルの現状と将来の可能性を、米中貿易政策やサービス部門の動向など複数の視点から掘り下げていきます。
株式市場がアップルに冷たい理由:主に2つの懸念
① トランプ政権の貿易政策による製造コスト増加
ドナルド・トランプ大統領は再任後、より攻撃的な貿易政策を打ち出しています。とくに中国からの輸入品に対する関税はアップルのようなグローバルサプライチェーンを持つ企業にとって大きな打撃です。
アップルの製品、とくにiPhoneは大部分が中国で組み立てられています。そのため、関税負担は製品原価の上昇=利益率の低下を意味します。さらに、米国内製造へ移行するにも膨大なコストと時間がかかります。
② AI競争の遅れという懸念
もうひとつの市場の懸念は、アップルがAI(人工知能)分野でのプレゼンスが薄いことです。NVIDIA、Google、MicrosoftがAIを武器に評価を高めていく中、アップルはやや静かな印象を与えており、投資家の一部は「出遅れ感」を不安視しています。
それでもアップルが強い理由:揺るぎない3つの基盤
① 生態系(エコシステム)の強さとスイッチングコストの高さ
iPhoneを使っているユーザーの多くは、Apple Watch、Mac、iCloudなど他のApple製品・サービスを利用しており、他社製品に移ることが難しい環境ができあがっています。この“囲い込み”戦略は、アップルの安定した収益源となっています。
② 高利益率なサービス事業
注目すべきは、ハードウェアよりも利益率の高い**サービス事業(iCloud、Apple Music、App Store、検索広告など)**が急拡大している点です。
- 2024年現在、サービス事業はアップル全体の営業利益の半分近くを占めるとも言われています。
- 利益率は70%超で、製品販売(30~40%)を大きく上回ります。
しかし、その成長源が今後“規制リスク”にさらされる可能性も出てきています。
サービス部門に迫る2つの規制リスク
① App Storeの手数料問題
アプリ開発者から徴収している30%の手数料が、独占的であるとしてアメリカやEUで裁判・規制の対象となっています。もし大幅な変更を余儀なくされた場合、アップルの利益に直接的なダメージが出る可能性もあります。
BofAの予測では、最悪のケースでは純利益の10%減少もあり得るとされています。
② Googleとの検索契約が訴訟の対象に
SafariブラウザにおけるGoogle検索のデフォルト設定に関する契約も、米司法省による独占禁止法違反の審理中です。この契約からの収入は、アップルの**営業利益の約20%**を占めるとも言われており、契約解消となれば痛手となる可能性があります。
長期的には明るい?将来の成長戦略と投資判断
短期的なリスクがある一方、アップルはそれに備える戦略も着実に進めています。
- 米国内製造への5000億ドル投資:AIサーバーの国内生産などを含む。
- サプライチェーンの多国化:インド、ベトナムなど中国以外の生産拠点の整備。
- AI分野の取り組み:現時点で“静かに進行中”だが、既存製品のUXを高める方向で導入。
また、アップルは直近12ヶ月で985億ドルのフリーキャッシュフローを創出しており、これを使って株主還元や新規事業に積極投資が可能です。10年以上連続で配当を増やしてきたことも信頼感につながっています。
結論:アップル株は“懲罰”されすぎている?
現在の株価下落は、トランプ政権の政策や規制リスクを先取りして市場が「織り込み」にいっている結果とも言えます。しかし、アップルのビジネスモデルと財務体質は依然として世界最高水準です。
確かにリスクはありますが、それ以上にチャンスもあります。長期的な視点で見れば、アップルは今後も投資対象として十分に魅力的と言えるのではないでしょうか。