2024年、コストコ・ホールセール（Costco Wholesale）の株価はその安定した事業成績と投資家の支持を背景に急上昇しました。しかし、現在の高バリュエーションは、投資家に慎重な判断を求める要因となっています。この記事では、コストコの事業の強みを評価しながら、現在の株式の魅力とリスクを掘り下げて考察します。
コストコの成功の秘密
コストコは、アメリカを中心に展開する大手倉庫型クラブチェーンであり、7000万人以上の会員に価値を提供しています。同社の象徴的な商品である$1.50のホットドッグや$4.99のロティサリーチキンは、多くの消費者を魅了しています。
成長を支える強力なビジネスモデル
- 会員制の強み：コストコの収益の約半分は年会費に依存しており、90%以上の高い更新率を誇ります。
- 自社ブランドの成功：「カークランド・シグネチャー」ブランドは、食品から衣類まで幅広いカテゴリーで高い人気を維持し、総売上の約3分の1を占めています。
- 安定した財務基盤：2024年度の売上高は前年比7%増加すると見込まれており、収益成長率も9%と堅調です。
現在の高バリュエーションに潜むリスク
株価とPERのギャップ
2024年、コストコの株価は45%上昇し、現在の予想PER（株価収益率）は約53倍に達しています。この水準は、歴史的に見ても非常に高いと言えます。
比較される他の銘柄
- 成長株の巨人たち：Apple、Microsoft、NVIDIAの予想PERは30倍前後。
- 小売業界の競合：AmazonやWalmartのPERは約35倍。
過去の基準を超える水準
- 2024年初頭：PER約40倍。
- パンデミック前：PER約30倍。
現在のバリュエーションは、コストコ自身の成長速度を大幅に上回っており、特に将来的な利益成長率が年率約10%と限定的であることを考えると、株価の持続可能性に疑問が残ります。
アナリストの見解と予想
慎重派の意見
トライバイアットリサーチの分析によれば、PERが50倍を超えた銘柄は1年以内に40倍以下に下落する傾向があります。これは、コストコ株が市場の期待を下回った場合、15%から20%の下落が予想されることを意味します。
楽観派の意見
モルガンスタンレーのアナリストは、コストコが新市場での成功を収めている点を強調し、目標株価を$1,150としています。ただし、これも現在の水準と比較してわずかな上昇余地に過ぎません。
2025年以降の展望：成長の限界と持続可能性
米国内での成長余地
アメリカでは現在616店舗を展開していますが、新規開拓可能な市場は徐々に減少しています。店舗数が増えるに連れ、既存市場での競争や成長の減速が懸念されます。
海外市場でのポテンシャル
海外市場では依然として成長余地があり、特に新店舗開設時には大行列ができるほどの人気を誇ります。しかし、海外展開にも高コストや文化的な壁といったリスクが伴います。
コストコは素晴らしい企業、でも株式は慎重に
コストコはその独自のビジネスモデル、安定した収益構造、そして消費者の支持を受けた素晴らしい企業です。しかし、現在の株価水準とバリュエーションを考えると、投資家にとってのリターンが限定的である可能性が高いと言えます。
投資家は、以下のポイントを考慮すべきです：
- バリュエーションが現在の高水準を維持できるのか。
- 将来的な利益成長が株価上昇を支えられるのか。
- 海外市場での成長がどれほど実現可能なのか。
