私たちは株式市場を「合理的な判断の集まり」と考えがちですが、実際には広告や有名人、流行の一言で大きく反応する、とても人間的な側面を持っています。
アメリカのアパレルブランド「アメリカン・イーグル・アウトフィッターズ(AEO)」の事例を見れば、このことがよくわかります。
セクシーな広告で17%の急騰?AEO株に何が起きたのか
AEOは近年、商品戦略の失敗や関税の影響で株価が大幅に下落していました。実際、2025年1月から7月までに42%も下落していたのです。
しかし、数日前に発表された女優シドニー・スウィーニーを起用した広告キャンペーンにより、株価はたった数日で17%も急騰しました。白いタンクトップとルーズなジーンズ姿でエンジンに寄りかかる広告映像は話題を呼び、一気に投資家の注目を集めたのです。
一見すると、「タイミング良く買えば大勝利」という成功体験のようにも見えますが、果たしてこれは本質的な成功なのでしょうか?
市場の感情と“釣り餌”の関係性
株式市場はときに非常に感情的です。セクシーな広告や有名人の起用が一時的に株価を動かすこともあります。しかし、これは本質的な企業価値とは関係がなく、まさに“釣り餌”のようなものです。
2009年のタイガー・ウッズのスキャンダルを覚えていますか?好感度の高い彼のイメージが崩れると、彼のスポンサーだった企業(ナイキ、ペプシ、ギルレットなど)の株価まで大きく影響を受けました。
つまり、市場は好意にも不信にも過剰反応するのです。
長期リターンの真実:たった数%の企業が市場を動かしている
では、長期的に見てリターンを生み出しているのはどのような企業なのでしょうか?
アリゾナ州立大学のヘンドリック・ベッセンバインダー教授による研究によれば、1926年から2016年までに米国市場に上場した企業のうち、米国短期国債を上回るパフォーマンスを示したのはわずか全体の4%だったそうです。
さらにその中でも、上位わずか0.3%の企業が全体の50%以上のリターンを生み出していたという驚くべき結果があります。
Apple、Microsoft、ExxonMobil、GE、IBMなどがその代表格です。
最近では、NVIDIAやTesla、Meta、Amazonといったテック大手10社が市場全体のリターンの50%以上を牽引しているという分析も出ています。
トレンドや広告では勝てない。だからインデックス投資
このように、短期的な“話題”に惑わされて売買を繰り返すよりも、長期的に広く分散されたインデックスファンドに投資する方が、結果的に優れたリターンを得られる可能性が高いのです。
インデックス投資なら、個別企業のスキャンダルや話題に振り回されることなく、市場全体の成長をコツコツ享受することができます。
特定の企業が急成長しても、あなたのポートフォリオにはすでに組み込まれている可能性が高く、逆に倒産や株価暴落があってもダメージを軽減できます。
市場の“釣り餌”に引っかからないために
投資で大切なのは、一時的な盛り上がりに飛びつかず、冷静に構造的な視点で判断することです。
・有名人が登場する広告
・一時的な話題性のあるニュース
・SNSでバズっている銘柄情報
これらの多くは“短期的な釣り餌”であり、長期的な企業価値とは関係がない場合が多いのです。
まとめ:静かに市場に居座る者が勝つ
株式市場は派手な話題に反応します。しかし、本当の勝者は静かに、長く、地道に投資を続けた人たちです。
市場の“釣り餌”に惑わされず、インデックス投資などで分散されたポートフォリオを長期保有することで、予測できない未来でも安心してリターンを得ることができます。
もし今、短期的なリターンに焦っているなら、少し深呼吸をして、「本当に長期的な視点で判断しているか」を見直してみましょう。