投資の世界において、「オマハの賢人」ことウォーレン・バフェットの名前を知らない人はいないでしょう。彼の投資戦略は長年にわたって多くの個人投資家やプロフェッショナルに影響を与え続けてきました。そんな彼が、2025年末に95歳での引退を表明したことで、改めて彼の“投資哲学”が注目を集めています。
では、バフェットが一貫して「投資を避けてきた業界」はどこなのでしょうか?
今回は、彼が長年距離を置いてきた4つの産業について紹介し、その背景にある考え方を掘り下げてみます。
1. 新興技術分野:理解できないものには投資しない
バフェットは、テクノロジーの分野に対して慎重な姿勢を崩していません。特に暗号資産に対しては非常に批判的で、ビットコインを「錯覚の産物」とまで言い切っています。
とはいえ、間接的に関与しているケースもあります。たとえば、ブラジルのデジタル銀行「ヌーバンク」への投資は、同社が暗号資産サービスを展開していることから、結果的にビットコイン市場の恩恵を受けている側面もあります。
ただし、バフェット自身は“自分が理解できるビジネス”への投資を最優先としており、急激な変化や不透明な将来性があるテック企業は、基本的に避けてきました。
2. 金(ゴールド):生産性のない資産には価値を感じない
バフェットは金のような「生産性のない資産」にも懐疑的です。2020年に一時的に金鉱株へ投資したこともありますが、すぐに撤退しており、あくまで例外的な措置だったと考えられます。
彼は金について、「投資対象ではなく、投機対象にすぎない」と語っています。企業株のように配当や事業成長によってリターンが得られるものに比べて、金は“ただそこにあるだけ”の資産と見なしているのです。
3. 航空業界:過去の失敗から学んだ教訓
バフェットは過去にアメリカの主要航空会社(デルタ、アメリカン、ユナイテッド、サウスウエスト)に投資しましたが、2020年にすべて売却しました。コロナ禍の打撃も大きかったですが、それ以前からバフェットは航空業界に対して根本的な懐疑心を抱いていました。
1989年にはUSエアウェイへの投資も試みましたが、高いコスト体質や競争の激しさが足を引っ張り、彼にとって満足のいく投資にはなりませんでした。航空会社は景気変動や燃料価格に大きく左右されやすく、持続的な利益を生み出すのが難しい産業といえます。
4. 原油・エネルギー:価格依存が大きすぎるリスク
バフェットは2000年代にコノコフィリップス(ConocoPhillips)に投資し、大きな損失を被りました。当時は原油価格が高騰していたことから、“今が買い時”と判断したのですが、その後の価格下落により、巨額の評価損を出すこととなりました。
この失敗は、いかに将来の価格変動が読みにくいか、そして価格に依存するビジネスの不安定さを示しています。近年はシェブロンやオキシデンタル・ペトロリアムなどに投資しているとはいえ、それらはバフェットのポートフォリオの中でも例外的な位置付けであり、過度なエネルギー関連のエクスポージャーは避けているのが実情です。
まとめ:バフェット流「リスク回避」の極意
ウォーレン・バフェットは数十年にわたり、変わらぬ投資哲学で大きな成果を上げてきました。それは、「理解できないものには投資しない」「生産性のない資産は避ける」「過去の失敗から学ぶ」「感情に流されない」というシンプルで普遍的な原則に基づいています。
個人投資家としても、彼のこうした視点を参考にしながら、自分にとって理解可能で信頼できる資産への投資を心がけることで、より安定した資産運用につながるはずです。