1. はじめに
2023年、米国の高成長株グループである「マグニフィセント・セブン(M7)」は、人工知能(AI)技術の進展により大きな利益を得ました。このグループは、マイクロソフト、アマゾン、メタ、アップル、グーグル親会社のアルファベット、エヌビディア、テスラを含んでいます。2024年には、これらの企業がAIプロジェクトの継続によりさらなる成長を遂げると予想されています。
1.1. マグニフィセント・セブンの2023年の実績
2023年、マグニフィセント・セブンは米国の主要な株価指数を大きく上回り、特にAI関連の開発によって大きなブーストを受けました。この年、エヌビディアの株価は3倍以上に、メタとテスラは2倍以上に増加しました。アマゾンは80%、アップル、アルファベット、マイクロソフトは約60%の上昇を見せました。
S&P 500の残り493の株は、同期間にわずか7.5%の増加にとどまりました。これは、マグニフィセント・セブンのテクノロジー巨人がAIの可能性によって大きく成長したことを示しています。
2. 2024年におけるM7の展望
専門家たちは、マグニフィセント・セブンが2024年にAIブームのおかげでさらなる成長を遂げる可能性が高いと予想しています。
マイクロソフト
2023年、マイクロソフトはAI技術への関心が高まる中で、約60%の株価上昇を達成しました。この成功の背後には、マイクロソフトが提供するAIツールやハードウェア、そしてChatGPTメーカーであるOpenAIとのパートナーシップです。マイクロソフトは「数年間にわたる数十億ドルの投資を通じてAIのブレークスルーを加速させる」という戦略を採用し、AI競争におけるリーダーとしての地位を確固たるものにしました。2024年に関しても、アナリストたちはマイクロソフトのAI分野での進歩と発表が減速することはないと見ています。特にOpenAIとのパートナーシップの支援を受け、「グローバルAI革命の先駆者」として位置づけられています。
アルファベット
2023年、グーグル親会社のアルファベットは約60%の株価上昇を達成し、AI関連の進歩による注目を集めました。この年、グーグルはチャットボット「バード」と大言語モデル「ジェミニ」の発表を行いました。
バードの初公開は2023年2月に行われましたが、公開時に事実誤認をするなどのスタートは決して印象的ではありませんでした。しかし、その後のアップデートにより、バードはChatGPTの有力な代替品としての地位を築いています。2023年初頭、グーグルは独自のLLM AIモデルである「ジェミニ」を導入し、OpenAIのGPT-4モデルを上回るパフォーマンスを報告しました。
グーグルはまだMSFT/OpenAIに後れを取っているかもしれないが、AIの進歩は驚くほど速いと予測されています。将来的なジェミニのアップグレードにより、グーグルは競争でどうなるかは見どころです。
2024年には、グーグルが「ジェミニウルトラ」のリリースを予定しており、これは「高度に複雑なタスクに対応する最大かつ最も能力の高いモデル」であり、「バードアドバンスト」を動力源とする予定です。
アマゾン
2023年、アマゾンはAI分野での著しい進歩を遂げ、その結果、株価は80%以上の大幅な上昇を記録しました。この成長の背景には、同社がAmazon Web Services(AWS)を通じて提供するAIサービスの拡大があります。
アマゾンは2023年に、「ベッドロック」というサービスをAWSで開始しました。これは「APIを通じて主要な基盤モデルを利用可能にし、開発者向けのツールを提供して、ジェネレーティブAIアプリケーションの構築と拡大を支援する完全に管理されたサービス」として説明されています。さらに、アマゾンはAWSを通じて、GenAIアシスタント「Q」を導入し、11月にはGenAIに最適化された次世代のカスタム設計AWSチップを発表しました。
アマゾンは、既にテクノロジー分野で成功を収めている企業への数十億ドル規模の投資を通じて、AI分野での地位を強化しています。アマゾンは、AI企業Anthropicへ最大40億ドルの投資を行うと発表しました。これにより、アマゾンはマイクロソフトが支援するChatGPTやグーグルのバードといった競合他社との競争において、より良い立場に立つことができるようになります。
AWSのCEOであるアダム・セリプスキー氏は、アマゾンが大言語モデル(LLM)「オリンパス」に取り組んでいるという報告について尋ねられた際、「アマゾンの自社モデルの複数のイテレーションを期待してほしい」と述べています。彼はまた、「技術が進化し、ビジネスがその統合を最適化するにつれて、2024年には非常に迅速な進化と変化が来る」と信じているとも述べました。
エヌビディア
2023年におけるAIブームの中でも、エヌビディアは特に顕著な成果を上げ、マグニフィセント・セブンの中でも最大の株価の動きを見せました。年間を通じて、同社の株価は数回にわたり、一日で二桁台の成長を遂げる場面がありました。特に5月25日には、製品への需要の急増と第一四半期の収益予想を上回ったことで、前日終値から24%以上の急騰を記録しました。
AIモデルの構築とAIツールの統合において、エヌビディアのチップは広く使用されています。Bank of Americaのアナリストは、AIトレーニングにおける同社の支配的地位は市場シェアの90%以上を占めると記述しています。2023年11月、エヌビディアはAIモデルを動力とする最も強力なグラフィック処理ユニット(GPU)、H200を発表しました。この新しいチップは、アマゾン、グーグル、マイクロソフトを含む複数のシステムで使用される予定です。
中国へのAIチップの輸出に関する米国の制限がエヌビディアの収益に与える影響に関する懸念がある中でも、エヌビディアには打撃があまりないと予測されています。インテル(INTC)やアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)などの競合他社と比較して、エヌビディアが最も「優位に立つ」と評価されています。
メタ
メタ(旧称フェイスブック)は、2023年にその株価をほぼ3倍に増加させるという顕著な成果を達成しました。この成功の背後には、メタがAI技術に積極的に取り組んでいることがあります。
2023年の初め、メタは大規模言語モデル(LLM)である「LLaMA」を導入しました。この技術の導入以降、同社はAI技術を活用してアルゴリズムや広告システムを改善し、効果を上げています。メタによると、「AIはメタのアプリやサービスの基盤的な要素であり、パフォーマンス、測定、キャンペーンの設定を強化している」とされています。CEOのマーク・ザッカーバーグは、AIレコメンデーションツールがメタプラットフォーム上でのユーザーの滞在時間を増加させていると報告しています。
メタのこれまでのAIへの取り組みは、同社のエコシステム全体を動力づけるレコメンデーションやランキングの改善に向けられています。時間をかけて、メタはLLaMA 2、AIエージェント、メタバースを通じてAIを収益化することができるかもしれません。
2024年には、メタがAI分野でさらなるイノベーションを推進し、それが同社の株価やビジネスモデルにプラスの影響を与えることが期待されています。投資家としては、メタのAI技術の進化とその市場への影響を見極めることが重要です。
テスラ
2023年、テスラの株価はほぼ倍増し、特に大規模なAIプロジェクトを発表していないにもかかわらず、AI技術への取り組みにおいて重要な進展を遂げました。テスラは、AI技術を活用した自動運転車の分野での先駆者として知られています。
テスラのCEOであるイーロン・マスクは、AIを「歴史上最も破壊的な力」とみなしており、「AIが全てをこなす時代が来れば、仕事は必要なくなる」とも述べています。2023年7月には、マスクはAIに特化した新会社「xAI」を設立しました。x.AIは独立した会社でありながら、X(旧Twitter)やテスラと「密接に協力する」とされています。同年11月には、AIチャットボット「Grok」を導入しましたが、この製品はまだ広く利用可能にはなっていません。
テスラにとって2024年は挑戦的な一年となるかもしれません。テスラの狭く高価な製品群が飽和に達し、EV(電気自動車)分野での競争が続くため、需要が低迷する」という評価もあります。
しかし、AI技術の分野においては、テスラの取り組みは依然として重要です。自動運転車の技術は、今後もテスラの重要な成長エンジンであり続けるでしょう。また、マスクが率いる新しいAI会社やその他のAI関連プロジェクトの進展は、テスラにとって新たな成長機会をもたらす可能性があります。
アップル
2023年、アップルはAI分野への取り組みを強化し、株価は約50%の増加を達成しました。AI技術に関しては、他のマグニフィセント・セブンのメンバーほど積極的な公開はしていませんが、この分野での重要な動きを見せています。
アップルのCEO、ティム・クックは、「製品にAIを織り込む作業を非常に熟慮をもって続ける」と述べています。2023年の収益報告会議では、同社がAIチャットボットの開発に取り組んでいることを示唆しましたが、具体的なリリース日は明らかにされていません。
AI技術の分野でのアップルの取り組みは、同社の製品やサービスの機能性とユーザーエクスペリエンスを高めることに貢献しています。さらに、AI技術の進化はアップルのイノベーション戦略において重要な要素であり、今後の製品開発においても重要な役割を果たすと予想されます。
2024年に関しては、アップルはiPhone 15の販売促進により特に有望な年を迎えることが予想されます。約2億4000万台のiPhoneユーザーがアップグレードを考慮するため、iPhone 15とサービス分野が2024年に向けて再加速する可能性があると評価されています。
3. まとめ
「マグニフィセント・セブン(M7)」は、AI技術の進展により2023年に大きな利益を得ました。2024年には、これらの企業がAIプロジェクトの継続によりさらなる成長を遂げると予想されています。個々の企業についても、AI分野での革新的な取り組みにより、今後も肯定的な見通しが期待されています。